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2015年夏、神戸市兵庫区の会下山公園山頂広場。

朝6時過ぎ、三々五々集まってくる人々から映画は始まる。神戸市は古くからラジオ体操会が盛んな町だ。 

総勢250名あまりが集まって朝のラジオ体操が始まる。

世話役の木下文夫さん(67歳)「僕はまだまだ新米。6000回以上達成者が一杯いますよ」

伝統あるラジオ体操会が一度だけ途絶えそうになったことがある。

1995年1月阪神淡路大震災。それでも震災四日目には復活し現在に至る。

 

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震災直後の火災を記録した映像が残っている。

「記録することは大切なことだ」元会長:山中敏夫さん(88歳)の証言が重い。

「一面の焼け野原、震災は戦災の再来だった」そう語る頼廣安子さん(83歳)は

「焼夷弾の雨の中、妹の手を引いて会下山に向かった」日のことを昨日のことのように憶えている。

握り締めた手の温みと鼻に付く焼け焦げの臭い。兵庫区の人口はいまだに戻らず、町には高齢者が目立つ。

 

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震災から十年を契機に、「兵庫モダンシニアファッションショー」が開かれてきた。

毎年12月に様々な人々が思い思いのファッションでステージに立つ。映画はショー本番までの半年を追う。

神戸芸術工科大学ファッションデザイン学部長・見寺貞子教授(60歳)は元大手百貨店のバイヤーだった。

震災を経て大学に移り、人間とファッションの好ましいあり方を追求してきた。

「ファッションショーは、教えるというより学ぶことの多いライフワークだ」と語る。

「お年寄りたちはめちゃ元気。元気をもらうというより元気を吸い取られるよう」と笑う。

出演メンバーは多士済々。仲良し三人組の男性陣(75歳78歳79歳)は生粋の神戸っ子・兵庫人だ。

 

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女性陣のリーダー頼廣さんは言う。

「男性と違い女性はエエカッコしない。皆あけすけ。いつも仲良くとはいかない。諍いもあったり…。だって人間だもの」

仲間の春次子さん(83歳)は震災復興住宅で独り暮らし。

月二回開くふれあい喫茶では、朝早く起きて毎回卵100個を茹でる。

行政などの支援があるとはいえ、実際に切り盛りするのは住人である高齢者自身だ。

下釜誠幸さん(76歳)は長崎県浦上出身。長崎の原爆投下を体験した。

「目の前に太陽が現れたみたい」ファッションショーには障害のある人たちも参加する。

隠さない、構えない、飾らない。シビアだが温かい。

彼らは自分という衣もさらりと脱ぎ捨てて闊達自在。飄々洒脱。

そこには、歳を重ねたものが持つ知恵と豊かさが宿っているようだ。

夏から秋へ、それぞれの時間を生きる人々の姿が重なって…。

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2015年12月6日、兵庫公会堂。

第11回兵庫モダンシニアファッションショーが始まった。ささやかなハレのステージ。

ショーの翌日。会下山公園山頂広場には、変わらぬラジオ体操会のメンバーの姿があった。

ただ、夏とは違い未だ夜明け前で暗い。

前日ショーに参加した木下さんは二日酔みたい。

そこにはショーの裏方を務めた見寺教授や学生達の笑顔もあった。